No.5:グスタフ・マーラー 交響曲第9番 / カラヤン& ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 DEUTSCHE GRAMMOPHON 410 726-2 / CD 1984

マーラーは、私の大好きな作曲家のひとりです。
9曲ある交響曲の内、最も好きなのは第2番「復活」ですが、この第9番の第4楽章は別格ともいえる美しい曲なので、取り上げました。

マーラー交響曲は、どれも長大で、4管程度の大編成。旋律が複雑に入り組み、リズムも難しい。各楽器の能力を試すかのように、様々な音素材が万華鏡のように繰り出すため、指揮者&オーケストラの力量が問われるし、初めて聴く方は困惑することでしょう。クラシック(オーケストラ)の入門編としてはオススメできません。
でも、オーケストラの素晴らしさを体感し、もっと深く知りたいと思った時、少しの忍耐をもって、極々シンプルに音に身を委ねれば、あら不思議、いつの間にかマーラーの虜になってしまうでしょう。

マーラーボヘミア生まれのユダヤ人で、指揮者としてスタートし、徐々に作曲活動を始めたそうです。
モーツアルトから100年ほど後。彼の生きた時代は1800年代後半から1910年にかけてで、ヨーロッパが第1次世界大戦の波に飲み込まれようとしている時期。。。。世界史は苦手だったなあ (-。-)
同世代の作曲家に共通するところですが、そんな時代背景を反映してか、マーラーの曲には不安感、動揺、矛盾、希望と絶望等が錯綜している気がします。

この曲には多くの名盤がありますが、なにぶん長大な曲なもので、指揮者の解釈によって演奏時間が大きく変わります。ちょっと、ネットで調べたら次のとおり、えらい差があります。これだけテンポが異なると、違う曲に感じるでしょうね。
 短い演奏:70分31秒、内4楽章18分30秒(ワルター/ウィーンフィル盤)
 長い演奏:88分39秒、内4楽章29分34秒(バーンスタイン/コンセルトヘボウ盤)
 紹介CD:84分22秒、内4楽章26分49秒

さてさて、このアルバムはカラヤン72才、亡くなる7年前の録音です。私は特にカラヤン贔屓ではないのですが、彼のクールな美しさととベルリンフィルの巧さがこの曲にははまっている感じがします。
で、オススメの第4楽章ですが、テンポは「アダージョ」です。 
そう、「緩やかに、遅く」という意味で、1拍が60半ば〜80チョイ。
最近、カラヤンアダージョばかりを集めた企画CDが大いに売れたそうですが、日本人の感性に合うテンポなのかもしれませんね。

弦を主体とした深い響きは、次第に荘厳かつ情緒的となり、私を至福の空間に導いてくれます。何でも“著名な方が「自分の葬儀にはこの楽章を流してくれ」と遺言した”って話しもあるそうです。
この演奏はライブ録音なのですが、現場で聴いた人々はさぞかしシアワセだったことでしょう。

そんな曲調を、短い演奏の代表者、ワルターはこう表現したそうです。
「終楽章において、彼はこの世に決別を告げる。その結尾は、あたかも青空に溶けいる白雲のようである」

時々、寝るときにこの楽章を流しているのですが、その美しい響きに、いつも最後まで持たず私は夢の中。

PS:最近、小沢征爾 / サイトウ・キネン・オーケストラ盤(SONY SRCR2725-6 / CD 2001)を入手。こちらも素晴らしい演奏です。