No.11:L' HOMME A VALISE (鞄を持った男) / MARK GOLDENBERG

 KITTY RECORDS H33K20001/ CD 1985

1982年、強烈なインパクトを持つTVCMが放送された。
火を噴く裸の男、輪を投げる男、マントの男、翼を付けた天使の様な少女、荒涼とした砂漠で踊る大道芸人たちの姿を少しアンダー気味の映像で捕らえたものだ。
そして「永遠の詩人ランボー。あんな男、ちょっといない」というコピー。
そう、サントリーローヤルのCMである。

吟遊詩人、砂漠の商人・・・、この「ランボー編」の続編は、アントニオ・ガウディの建築物を背景にお面の女性が踊る「ガウディ編」。
いずれも不思議な異次元空間で、ちょっと不気味な雰囲気を醸し出している。
そして、バックに流れる音は無国籍風の不思議な響き。

このシリーズの音楽を担当したのは「マーク・ゴールデンバーグ」というギタリスト。
リンダ・ロンシュタットのアルバムに参加したり、ジャクソン・ブラウンのバックバンドに参加したり、自身のロックバンドを結成したり、はたまた加藤和彦のアルバム制作に協力したりと、多方面で活動していた彼が、このCMシリーズを担当したと知ったのは後のこと。

このアルバムは、サントリーのCM曲シリーズの成功を受けて、日本で制作した彼自身の初のソロインストメンタルアルバムでもある。
驚いたのは、作曲とアレンジのみならず、本職のギター(本アルバムではナイロン弦が主)、シンセサイザー、ドラムマシン、ベース、ピアノ、ビブラフォンマリンバ等、すべてひとりで演奏しており、おまけにコンポーザーにプロデュースまで担当していること。そしてディレクター、レコーディングエンジニア、マネージメント等はすべて日本人が担当している。
自分の中にある引き出しを開け放す方法としてたどり着いたのが、このようなインストマルチプレーなのではなかろうか。

収録12曲中、5曲がサントリーのCMで使われた曲だけれど、他の曲もドキュメンタリー番組等のBGMで使われたりしているので、彼を知らなくても「あっ、これ聞いたことがある!」と反応する方が多いことでしょう。

D.T.M機材やソフトの発達もあって、今やプロ・アマを問わず多くのミュージシャンが自作のインスト作品をひとりで演奏できるようになったけれど、20年近く前に発表されたこのアルバムは、そんな人たちにとってもひとつの原点になるのだろうね。
この映像に見覚えのある人は多いはず。→  
ロケ地はアメリカのディスバレーだそうです。