No.12:EXTREME BEAUTY / 吉田美奈子

 MCA BICTOR MVCD-17 / CD 1995

2002年の秋、日米野球MLBオールスターズ vs NPB オールスターズ)第1戦の試合前、東京ドームに彼女が歌う「君が代」が響いた。
この中継を偶然ラジオで聴いていた私は、彼女の登場にワクワクし、直後の国歌斉唱でぶっ飛んだ。そんな感動的な君が代体験だった。

吉田美奈子。10代半ばからはっぴいえんど周辺のサークルに出入りしていた彼女は、1973年に細野晴臣率いるキャラメル・ママをバックに従え、『扉の冬』でデビューした。

彼女を聞き始めたのは1978年に『愛は思うまま』というアルバムを発表した頃で、クロスオーバーミュージックが流行っていた時代。強烈なビートに乗ったパワーのある日本語の歌を耳にして、参りました!って感じ。

その後はブラック系の要素を取り入れたり、フュージョン系のミュージシャンを使ったり、ある方向性の範囲でサウンドを変えてきたけれど、彼女の歌のパワーと表現力は一貫して心に響いてくる。

一方では、ソングライターとしても有名で、数多くのミュージシャンに詞を提供している。特に山下達郎とはつながりが深く、数十曲も作詞し、アルバムにコーラス参加したりしている。
なので、山下達郎も好きな私が彼女を聞くようになるのは時間の問題だったのだろう。
アンルイスの「恋のブギウギトレイン」等も彼女の作詞だし、 笑っちゃうようなアイドルにも提供している(詳細は公式ホームページ参照)

90年代になって、ピアノのみのコンサートを行ったり、ゴスペル調のアレンジを多用したりして、落ち着いた感じの曲調に変化してきた。自分的には好ましい方向だ、なんて喜んでいた時期に発表されたのがこのアルバム。我が家のCD棚で、超お気に入りの1枚である。
しっとりして、それでいてパワーがあって、うるさく感じず癒される。

今年、彼女はデビュー30周年になる。自分のスタンスで長く続けられるのは、それだけのものがあるからだろう。先日発売されたライブDVDは、シンプルなステージセットで華やかさは無いけれど、歌と演奏は聞き惚れる。Misiaも素敵で好きだけれども、表現力や精神的な深さという点ではまだまだ彼女に及ばないよ。