NO.13:CHRISTMAS STER / ALED JONES with The BBC Welsh Chorus

 VICTER VDC-1229 / CD 1990

アルバムタイトルで7曲目に収録されている「クリスマスの星」とは「東方の国に住んでいた3人の占星術者を、ユダヤベツレヘムで生まれた幼子イエスのところに導いたといわれる星」のことだそうです。

クリスマスに宗教的意味合いを持つ国とは違って、日本のクリスマスは商業主義がはびこり、単なるイベントデーとして、精神性のかけらすら見つけにくい感がしますが、日本人の宗教性を考えるとそんなものかもしれませんね。

もっとも、自分的にはクリスマスだからといって何するわけでもないのです。物心ついた頃、12月24日も25日も普段と何ひとつ変わらない日・・・・・イヤ、それよりも「2学期の通信簿をもらう」という嫌な時期としか思っていなかったくらい。
それでも、クリスマスを身近に感じるようになれたのは、やっぱり音楽のおかげ。

最初に接したクリスマスソングは何だったのだろう?
古今東西、各ジャンルで(おっと、さすがに純邦楽はないかな?)多数のミュージシャンがクリスマスアルバムを制作しており、名盤も数多く(駄作も多いが)あるけれど、クリスマスはドンチャン騒ぎをするよりも心に染み入る音楽を聴きながら静かに時を過ごしたい、と思う。そんな気分にあわせてセレクトしたのがこのアルバム。

「100年に1人のボーイ・ソプラノ」といわれた、アレッド・ジョーンズ。
彼は1970年12月にイギリスのウェイルズ地方で生まれ、4才から聖歌隊で歌い始め、12才でプロとしての活動を開始した。このアルバムは彼が13才の時のレコーディング。

ボーイ・ソプラノ=いいとこのオボチャマ、というようなイメージもあって、ビジュアル的な部分で鑑賞するのにはツライ面があったんだなあ。小学生相手に何やってるんだろうなあ、って感じでね。でもね、CDのように音声だけであれば、そんな垣根も取り払いやすいし、自分もいい年になって、少しずつだけれど、良いと思うものは素直に受け入れられるようになってきたんだなあ。

アレッド君の歌声は、ボーイソプラノの難しさであるハイトーンのピッチが安定しているし、よくあるキンキンした甲高さがまったくない。発声の技術的なことはわからないけれど、感情は豊かに感じる。このアルバムではBBCウィルズ合唱団とオルガンをバックに、イングランド、フランス、ベルギー、チェコ等の古いクリスマスキャロル(聖歌)等が歌われているけれど、癒し感がものすごくある。まあ、今ならば流行の先端系になるのでしょうかねえ。

ところで、神童、天才から凡人にとは、よく言われるコースですが、このアレッド君も16才の頃に声変わりを迎え、惜しまれながらもどうしようもない経過をたどり、普通の歌い手になってしまったそうです。成人後はTVキャスターになり、家庭を築いたとの事ですが、彼がタダの凡人と違っていたのは、レコーディングで残した歌声を大切にしてくれる多くのファンがいたこと。そんなファンの要望の後押しもあって、最近、彼は普通の歌い手としてアルバムを制作しています。記録に残すってことは、記憶を残すってことでもあるんですね。

でも、彼は今、どんな気持ちで自分の少年時代の声を聞いているのでしょうね。興味あるところですね。