No.15:VARTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家 / ちあきなおみ

 TEICHIKU ENTERTAINMENT TECE-28399 / CD 2003

昭和47年の秋、「喝采」という曲が日本中に流れました。それこそ、大人から子供までが口ずさめるようになる程、テレビやラジオから聞こえてきたものでした。
今では、ものまねネタとして有名な彼女ですが、私的には素晴らしいボーカリストと評価しています。

喝采」大ヒット 後、昭和53年に結婚し、徐々に活動の場をテレビから舞台に移して行きます。また、レコード会社もコロムビアからビクター、そしてテイチクへと移籍し、演歌主体からニューミュージック系、ジャズやシャンソン等のカバー曲も歌うようになり、ボーカリストとしての幅を広げて行きます。
ところが、平成4年にご主人を亡くされ、それを機に一切の芸能活動から退いてしまいました。しかし、彼女のCDは現在も売れ続けており、新たに全曲集も発売されています。それだけ根強いファンが居るということでしょう。アーティストとして嬉しいでしょうね。

さて、このアルバムですが、企画の発端は5曲の未発表ライブ音源が発見されたことだそうです。その音源の中に、ライブを聞いたファンの間で“幻の熱唱”と称された「朝日のあたる家」(ジ・アニマルズ、浅川マキ訳詞)が含まれていたことから、ライブ感を生かした構成が発案され、“今、彼女がライブをやったらどうなるか?”という視点で、全19曲、78分間のバーチャルコンサートというコンセプトになったそうです。そして、このアルバムの制作のために、テイチク時代のスタッフが集結されました。

収録曲は演歌、民謡、ポップス、ニューミュージック、シャンソンと幅が広く、アレンジも演歌独特の匂いを消しています。「喝采」はピアノと弦が主体のアレンジだしね。有名どころの楽曲も歌ってますが、「東京の花売娘」や「黄昏のビギン」等、昭和の隠れた名曲が何とも良い感じ。

そして、13曲目、アルバムタイトル「朝日のあたる家」をひと声聞けば、ものまねで表現されているような彼女のイメージは吹っ飛んでしまいますわ。もっとも、顔が見えないからなのでしょうけれどね(笑)。いずれにせよ、聞いているうちに楽曲のジャンルを越え、ボーカリストのチカラに引き込まれます。

既存の全曲集やベスト盤は、彼女が在籍したレコード会社3社の版権上の制約なのか、コレダ!というものが無いように思います。つまり、コロムビア、ビクター、テイチク、それぞれの時代の全曲集的なもので、自分としてはひとりのアーチストを表現するための作品として物足りない感じを持っていました。このアルバムも選曲に対する制約はあったのでしょうけれど、“ライブの再現 ”というコンセプトによって、そんな問題に対するひとつの答えが出されているように思います。ただ、欲を言えば「夜間飛行」が収録されていればなあ、と言うことでしょうか(個人的に大好きな曲なんですわ)

活動を止めて10年後、当時のスタッフの手でアルバムが制作される。素敵なことですよねえ。そして、彼女はこのアルバムをどのように受け止めたのでしょうかねえ?