No.20:THE SOLO ALBUM / ソニー・ロリンズ

 milestone VDJ-1021 / CD 1985

1985年7月19日、ニューヨーク無近代美術館の中庭、ロダンのモニュメントの脇、テナーサックスを吹きながら、その巨人は登場した。演奏時間56分間、テナー1本のインプロビゼーション(=即興演奏)は、時折聞き馴染みのあるメロディーを入れつつも、自在にリズムと旋律を展開させ、すさまじい集中力を聞き手に伝えてくれる。

ピアノやギターは、メロディ、コード、リズムの要素を自在に組み合わせられるけれど、単音楽器であるサックスでのソロは、いわゆるネタが限られるので、長時間の展開になると単調になりやすいんだよね。でも、そんな懸念はどこ吹く風。聞き手を飽きさせることなく、グイグイと引きずり込まれるようなロリンズ節は当然ながら単音での展開なのに、いつしかリズムや伴奏が聞こえているような錯覚になる。

このライブの会場には750人ほどの聴衆がいたそうだけれど、CDからも次第に演奏に引き込まれて行く雰囲気がよく伝わってくる。現場で聞いた人は幸せだよなあ。

バンドでは8小節とか16小節のソロは奏者にとっての聴かせどころだけれど、何もない状態から56分間の即興ソロ演奏は、気の遠くなるようなパフォーマンスだよ。それも、息が上がることなく、終始安定したピッチで吹きまくる。凄いとしか言いようがない。

ソロの展開、特に即興演奏の場合、演奏前にどの程度の決めごとをしているのだろうか?。
事前にある程度の展開を考えて吹いているのだろうか?、それとも、その場のノリで直感的に展開させているのだろうか? 楽器を演奏する者としては気になるところだよね。

もっとも、そんなテクニックも持続的集中力もない私には、それを知ったところで劇的に変化などするわけもないけれど、このような演奏から感じる気合いと音楽の素晴らしさは多少の糧にはなっているのだろうね。