No.22:FILIPA GIORDANO / フィリッパ・ジョルダーノ

 ERATO 3984-29694 (輸入盤) / CD 1999

実は最初に歌声を聞いた時、彼女の名前や顔もわからなかったのですわ。
それは 2000年の春、TVのF1中継の時に何度も流れていた、資生堂プラウディアという化粧品のCM。独特のビブラートの歌い声にエフェクトを効かせたBGMは、ビゼーのオペラ「カルメン」の「ハバネラ」で、イヤに上手いけれど、こんな歌い方はポップス系の歌手なんだろうなあ、って思っていたのですが・・・。

それがイタリア出身の歌手「フィリッパ・ジョルダーノ」だと知ったのは、しばらく後のこと。いつものようにジャケ買いしたCDを聞いたときで、そのクレジットには「千年にひとりの声」、なんてコピーが書かれていました。

フィリッパ・ジョルダーノは、1974年2月14日にシチリア島で生まれたそうで、お父さんはバリトン歌手、お母さんはメゾ・ソプラノ歌手、お兄さんはチェリスト、お姉さんはピアニストとのことです。
こんな家庭環境で、物心ついた頃からクラシック音楽クラシック・バレエを習い始めた彼女は、9才で国立ダンス・アカデミーに入学したそうです。素質あったのでしょうねえ・・・、でもねえ〜、反抗期でしょうか?、16才の頃にはオペラ歌手に方向転換したかと思えば、しばらくするとポピュラー歌手に鞍替えしたそうですよ。

しばらく、有名なバンドのバックでコーラスを歌っていたようですが、実力ある者を見いだすのはどの国でも同じことで、何と「アンドレア・ボチェッリ」と同じメジャーレーベルが契約してくれたそうです。
事務所の力でしょうか、超有名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」の作曲者が楽曲を提供してくれたり、元ピンク・フロイドのロジャー・ウォータースが作曲に加わった映画『海の上のピアニスト』の主題歌やマリア・カラスへのオマージュ・ソング「MARIA」など、良い曲がズラリと並び、前半のオペラアリアに負けず劣らず、後半のオリジナル曲も素敵です。

マイクを立てエフェクトを効かせて歌うのはステージでも同じ。彼女はオペラの役柄の立場からではなく、楽曲から感じたものを本能と直感で歌うことに喜びを感じるそうなんですね。
当然のごとく、頭のカタイ、保守的なクラシック信仰者からはブーイングの嵐となります。
でも、クラシックの基礎トレーニングは十分に重ねているので、発生ウンヌンというものよりも、革新的な演奏スタイルが受け入れ難い、というレベルのものかと思いますね。
批判の高まりとは反比例して、私が即気に入ったように、このスタイルを評価する声も高まってきたのですね。

それまで無かった方法で表現することは、どんな時代でも賛否両論。
モーツアルトのオペラやベートーベンの交響曲も最初はブーイングを受けたらしいし、ず〜と近代ではビートルズや4畳半フォーク等・・・・そういえば、ドリカムの曲を黛俊郎氏が酷評していたっけ。コード進行がルール違反だと。歌い方で言えば桑田節なんかもそうだし、今は消えてしまったけれど、音程と声質を変えるボコーダーという名の妙なエフェクトもあったよね。

このアルバム、癒し系のはしりでもあります。とってもアクが強いけれどもくどくない。刺激的だけれども疲れがとれる。そして、真剣に効いてもBGMに流しても邪魔にならない。
私は擁護派ゆえ、贔屓しすぎでしょうかね(笑)
そうそう、2ndアルバムも素敵です。