No.23:AT ABBEY ROAD 1963-1966 / GARRY&THE PACEMAKERS

 TOCP-50425 EMI / CD 1997

サッカーA代表が、先日イングランド遠征をしましたね。そのニュースを見た時にチョイと聞こえてきた曲がありました・・・・・・・。

うんちくを並べられるほどロック・ポップス系を聴いていない私ですが、広く浅いコレクションゆえ、少しはご紹介できそうなジャケットもありそうです。でも、音楽的に突っ込んで説明するとボロボロになりそうなので、ちょっと緊張しつつ書いておりまする。。。

ところで、このアルバムのタイトルである「アビー・ロード」といえば、4人並んで横断歩道を歩いているジャケット、そう、ビートルズの超有名アルバムですよね。

アビー・ロード・スタジオは1931年の開設当時、EMIスタジオという名称だったそうです。私はオーケストラの録音場所として知ったのが先でしたが、ちょっと調べてみたら、クラシック系が第1スタジオ、ロック・ポップス系が第2スタジオの様です。

このアルバムは、そんなアビー・ロード・スタジオの100周年を記念して企画されたAt Abbey Roadシリーズのひとつです。発売直後にCD屋をウロウロしていたら、ペイスメイカーズの名前を見つけて思わず手に取りました。なんせ、それまでほとんどリリースされてなかったですからね。

ペイスメイカーズはビートルズと仲が良く、ともにリバプール・シーンを沸かせるバンドだったそうです。個人的にはリーダーのジェリー・マースデンが持つギターの位置(ジャケット参照)と田端義雄と、どちらが高いか興味のあるところ。

話を戻しますと、ビートルズはご承知のように1960年代に入ってイッキにブレイク。
一方のペイスメイカーズは、ビートルズと同じマネージャー「ブライアン・エプスタイン」&EMIのプロデューサー「ジョージ・マーティン」と契約したことで、ビートルズの仲良しバンドから2番手バンド、いわば保険バンドのポジショニングと見られるようになり、これがそのままバンドイメージとなってしまった感じだろうか。

彼等は63年1月、How Do You Do It(恋のテクニック)でデビュー。この曲は初め、ビートルズのデビュー曲に予定していたそうだけれど、ビートルズがこれを蹴ったためにペイスメイカーズがリリースすることになったらしい。しかし、これがデビュー曲全英1位となって、後にビートルズも録音するあたりが面白い。

そして、2ndシングル「I LIKE IT」、3rdシングル「You'll Never Walk Alone」も全英1位!。デビューから3作が1位となったのはペイスメイカーズが初めてだそうで、ビートルズ旋風が吹き荒れる影での偉業。

実は3作目の「You'll Never Walk Alone」はサッカーのサポーターに受け入れられ、いつのまにかイングランド代表チームの応援ソングになっている。(ふぅ、ようやく冒頭の話につながった)

それと、アレンジ的にもこの曲で見逃せないことがあるのですね。
それはストリングスの導入!。当時のロック系では斬新、奇抜、革新的なアイディアだったそうです。彼等はこの後も数曲にストリングスを導入し、いずれも成功しています。そして、このことで自信を深めたプロデューサー(ビートルズと同じ人ね)、ポールマッカートニーと作戦を練ったのかどうかは知りませんが、さらに大胆にアレンジしたストリングスを取り入れ、かの名曲「Yesterday」が誕生!・・・・となにげに絡む絡む。。。
まあ 、やな言い方をすれば、2番手バンドが実験的試みにトライして、成功の確信をもってから華々しく主役が登場するということでしょうか。もちろん楽曲の素晴らしさはありますが、営業的にはカタくいってるんですねえ。

そうそう、まだまだビートルズ絡みがありました。
7曲目に納められている「Hello Little Girl」はジョン・レノンポール・マッカートニーの作品で、 本来3rdシングルに予定していた曲。レコーディング後にボツになったテイクがこの企画で復活したもの。(ビートルズはアンソロジー1に収録)

また、6曲目「A Shot Of Rhythm And Blues」と9曲目「Slow Down」はビートルズも録音しているし、22曲目「Rip It Up」はジョン・レノンがソロ録音している。

ただ、彼等はマージー・ビートから抜け出せなかった。60年代半ばにもなると世の中の好みはポップからフォークロックへと移りつつあり、この流れに乗っていったビートルズとは対照的に表舞台から消えてゆくことになります。

さて、このアルバムをプレーヤーにかけてみましょう。
音が出た瞬間、すぐに思い浮かぶのは私の大好きな山下達郎大瀧詠一あたりでしょうか。いやいや、もっともっと広い範囲のミュージシャンの匂いがする。
どこか親しみやすく懐かしさもある音、日本の音楽がマージー・ビートの影響を強く受けているのがよ〜くわかりますよ。

ビートルズを絡ませると複雑な背景が見えてくるアルバムだけれど、単純にサウンドを聴けば「良き時代」が目の前に甦りまするぞ。。。