No.44:Pineapple / 松田聖子

 CBS SONY 28AH1432 / LP 1982

当時、彼女を比喩して「ぶりっこ」という新語?ができたり、ヘアスタイルに名前が付いたりと、良くも悪くも強烈なインパクトをもって登場したアイドルです。
声高なアンチ派もたくさんいましたから。「オレ、聖子ファン!」なんて言ったら、「え〜〜〜、え〜〜〜〜〜〜」なんてこともありましたねぇ。
でもねぇ、彼女のアルバム、良い曲が何と多いことでしょう。

例えばそれはね、デビューから11枚目までのアルバムの作詞者と代表的な作曲者を並べて見れば想像できるかと、
1.SQUALL(1980) : 三浦徳子/小田裕一郎
2.North Wind(1980) : 三浦徳子 / 小田裕一郎
3.Silhouette(1981) : 三浦徳子 / 小田裕一郎財津和夫

1作目と2作目は全曲、三浦/小田のコンビですが、3作目に財津和夫が加わり方向転換。これがその後、彼女の曲の人気を長く保ち続ける要因となったのではないかな、と思います。

4.風立ちぬ(1981) : 松本隆 / 小田裕一郎財津和夫鈴木茂、他
5.Pineapple(1982) : 松本隆 / 財津和夫来生たかお原田真二呉田軽穂、他
6.Candy(1982) : 松本隆 / 財津和夫大滝詠一南佳孝細野晴臣、他

4作目からは、当時のアイドルヒットメーカーである松本隆がすべての作詞を手がけるようになり、作曲陣もバラエティに富んできます。
で、5作目になって、これまでの試みが良い方向にまとまり、ひとつの形として実になった感じの作品となります。

7.ユートピア(1983) : 松本隆 / 杉真理、甲斐祥弘、上田知華、他
8.Candry(1983) : 松本隆 / 林哲司井上鑑、SEIKO、他

このあたり、作曲陣を見れば分かりますが、ちょっとロック色が強まります。そして8作目では自身作曲しています。

9.TinkerBell(1984) : 作曲者に尾崎亜美が登場。
10.WindyShadow(1984) : 作曲者に矢野顕子が登場。
11.The 9th Wave(1985) : 作詞者が吉田美奈子尾崎亜美矢野顕子来生えつこ銀色夏生と多彩にし、詞の世界のイメチェンを図っています。作曲者には大貫妙子が登場。

まっ、こんな感じでして、この後12作目に全曲英語のアルバムを作り、アメリカ進出を図りますが予想どおり失敗!、年齢的にもアイドルからの脱皮を模索する時代に入ります。

個人的には3、5、7、11作目が好みですが、特にここで取り上げました5作目はシングル曲「赤いスイートピー」、「渚のバルコニー」等を含む全10曲がみんな良い曲。いま聞いてもサウンド的に何ら遜色ないし、爽やかで夏にピッタリの1枚です。

このアルバムが発表された1982年はCDが登場した年でもありますが。当初の数少ないCDタイトルの中に、現役アイドルのオリジナルアルバムとして唯一、本作がラインアップされたということからも、その出来は推測できるでしょう。

結婚後、アイドルからの転換を図ったり、試行錯誤していた彼女ですが、最近のライブではアイドル時代の曲を数多く歌っているようで、当時の彼女のファンとしては嬉しいこと。
アイドル歌手という言葉も死語となりつつある時代で、彼女にはいつまでもアイドルであって欲しいと思うのです。