No.51:SONG FROM THE LABYRINTH / STING

 Deutsche Grammophon UCCH-1018 / CD 2006

ある日のCDショップで、いつものようにジャケ買いできそうなアルバムを物色していたら、洋物のロック&ポップスの棚で目に入った「黄色い帯」、それも「スティング」のコーナー。
あれっ、何でここに?
何故ならその黄色い帯とは、クラシックの大レーベル「グラモフォン」の目印。
スティングがグラモフォンレーベル????

スティングがこのアルバムで取り上げたのは「ジョン・ダウランド」というイングランドの作曲家による歌曲。ダウランドという作曲家、私もこのアルバムで初めて接したのですが、何とびっくり、16世紀後半の方なんですねえ。大バッハ先生やビバルディ御大の先輩、いわゆるルネッサンスの音楽じゃないですか!。日本で言えば、それを、リュートの伴奏で歌っている。あっ、リュートってのは、琵琶の親戚のような楽器だけど、音色的にはギター系。
つまり、リュート伴奏のルネッサンス歌曲ですから、グラモフォンレーベルも肯ける。

日本版にはスティング本人による詳細な解説が付いています。
この解説によると、彼がダウランドの歌曲に興味を持ち始めたのはポリスの活動絶頂期で、ロックシンガーとして、どのように歌ってやろうかと。そして、それから10年位して、ピアニストのラベック姉妹のひとりが「あなたの声に合っているかもしてない」と背中を押してくれ、レッスンを受けて非公式に3曲披露。そして、このアルバム製作の数年前に、友人のギタリストによりリュートへの興味が高まり「その古楽器の迷宮のような複雑さと、慰めをもたらす音楽に引き込まれ始めた」と述べてます。

お堅いクラシック愛好家にとって、このアルバムはきっと「邪道」「まがい物」でしょう。
また、スティングのファンにも強い違和感を感じる方がいるかと思います。
要はそれだけ企画的なインパクトが強いのです。プロデュースはスティング自身とリュートで参加しているカラマーゾフという人だけれど、スティングが持った興味をここまで実現させていった関係者の慧眼に拍手です。

歌い方はあくまでスティングそのもので、クラシック的な歌い方ではないし、曲によってはオーバーダビングで声を重ねています。そして、所々で作曲者自身の手紙を‘あの声’で朗読しているのがまたニクイ。

スティングの歌唱と、一般には聞く機会が少ないであろうリュートの響き(これが上手い!)による吟遊詩人。夜中にひとり静かに聞きながら400年の時空を飛び越える・・・これからの蒸し暑い夜は少々時季外れかな(笑)

しかし、まさかスティングに癒されるとは・・・・思ってもいなかった。。。。