No.52:ふるさと-On My Mind- / 本田竹広

 TEICHIKU RECORDS TECD 39511〜2 / CD 2004

ジャズピアニスト「本田竹広
彼の音を初めて聞いたのは高校の頃、1970年代後半のジャズ・フュージョンバンド「ネイティブ・サン」での演奏と記憶している。 フュージョン全盛の当時、アフリカンリズムを取り入れたサウンドに、いいじゃ〜ん!って感じでノー天気で聞いていたけれど、しばらくして知ったのが、ネイティブ・サン結成前に参加していた「渡辺貞夫トリオ」での演奏。おお、4ビートももいいじゃ〜ん(笑)

しかし、フュージョンブームが去って、FM等で彼の演奏を聞く機会が減り、いつしか自分の意識から彼の名前が消えていた。

そんな彼の名前が甦ったのは1990年代に入ってから。
それも「倒れる!」とのニュース。

50歳前後に度重なって襲った脳の病気に立ち向かい、動かなくなった腕を指を、懸命のリハビリで克服し、たどり着いたのがこのアルバムの世界。
収録曲はご覧のとおり、童謡が主体で誰もが知っているメロディばかり。でも、そのメロディを奏でるピアノの音色は、とても深く暖かい。

精神的に何か悟ったような境地、テクニックは完全に戻らなくても、音楽を伝える上で大切なものがたくさんつまっている。演奏って、難しくやればいいってものじゃないことが伝わってくるんだな。その一方では、この音を奏でられるようになるには、こんな思いを重ねなければならないのかなあ、なんて思ったりして。。。。。

最近、TVで見たドキュメンタリー
リハビリを続け、紀尾井ホールでベートーベンの月光の演奏に臨んだけれど、演奏の途中で断念。客席に深々と頭を下げて、もう少し時間をくださいと。そして後日、きちんと再演。しかも、この間に骨折事故に遭っている。
元画像を通して、音楽、ピアノに対する執念さえ伝わってきたよ。ジャズに目覚める前はクラシック畑をだった彼、きっと、きちんとベートーベンを弾きたかったのだろうね。

ところが、これを区切りに新たな世界を切り開いて行くのだろうと思っていた矢先、昨年1月に飛び込んできた訃報。急逝心不全、60歳での旅立ち、なんとも酷じゃありませんか・・・・ねえ。。。。。

なお、最近、このアルバム収録曲の別テイクがCD化されています。