No.58:ベートーヴェン&モーツァルトのバイオリン協奏曲 / ナイジェル・ケネディ&ポーランド室内管弦楽団

 EMI 0946 3 95373 2 7 / CD 2008

ナイジェル・ケネディというバイオリニスト、このアルバムでは指揮もしています。
どんなバイオリニストかというと・・・・
原理主義権現なクラシック評論家にはボロクソ、というか評論の相手にもされないでしょね(笑
それでも私は、彼のようなミュージシャンは大好きだし、この演奏も良いと思います。

何故ボロクソ?
彼は小さい時にクラッシック奏法を習い始め、しばらくすると平行してジャズ奏法も習ったのですね。それもどちらも超有名なプレーヤーに教わっている。
その後の演奏活動もクロスオーバー的で、そのエッセンスはこのようなクラシック曲の演奏にも存分に現れているわけで、お堅い原理主義評論家にとってはとても許容出来ない行為(笑
でも、彼を高く評価している同業プレーヤーは多いみたい。

ほとんどの独奏協奏曲にはカデンツァと呼ばれる独奏部分が設けられていて、本来はいわゆるジャズで言う即興演奏に当たる部分なんだけど、独奏者が自由に即興的に演奏するという、ライブの見せ場をつくっているのは昔からあったんだよね。でも、100年も200年も演奏され続けていると、独奏者のテクニックや発想力の問題から駄作カデンツァも数多く演奏されたことは容易に想像付くわけで、そうなると、スーパーバイオリニストによる秀逸カデンツァが演じられると、いつしかその演奏を楽譜に起こして、スタンダード化してしまったってわけ。まっ、無難路線ね(笑
また、駄作を演奏されるのが耐えられず、カデンツァ部分までも自ら作曲してしまう作曲者もいたりして、この部分の独創性は、音楽の構成よりも解釈の差になっているのが現状なんだよね。


そんな状況に一石投じているのがこのケネディ
ベートーベンの協奏曲で、第1楽章はクライスラー作のカデンツァを用いているけど、第3楽章になると・・・・何と、ベースが入りビートを刻んでいるじゃないの!!、ベートーベンが得意とするティンパニーの刻みに呼応しているのか!って、勿論彼のオリジナルカデンツァなんだけど、おお、そう来るか!!ってワクワク、音楽しているよってね(笑

モーツァルトの協奏曲は第4番だけど、こちらはもう全楽章にオリジナルカデンツァが付いている。それもエレクトリックバイオリンを使い、ベースやチェンバロが加わってビートを刻んでいる。それでも音楽全体の流れに違和感を感じないのは、楽曲本来をしっかり把握し解析し、計算されているからなのだろうね。さり気なく主題の旋律を活かし、カデンツァ本来の意図をしっかり聞いてとれる。

ベートーヴェンモーツァルトも、当時は革新的なプレーヤーであり作曲者であるわけだから、現代におけるこの様なアプローチは個人的に大いに歓迎。音楽的にはものすごく難しいアプローチだけど、このようなマインドが新たな音楽を創造してくれるからね・・・あっ、モーツァルトはキライと公言している私だった(笑


この方もYouTubeに多くの映像がアップされてますね。
その中から、Summertimeの演奏を貼り付けておきましょうか!

きっと、固定観念に囚われない人なのでしょうね。
ジャケットに写るモヒカン頭のシルエット、52歳の彼のハートを象徴しているようです。